鍼灸院くらさろ跡地

次がんばるぞー


問診を全くしない『菜の花治療院』

大抵の治療院は治療前に『問診(もんしん)』というものをする。たとえば腰痛や肩こりなどの症状について、その症状はいつからどんな風に痛むのかといった情報をもとに治療方針をたてるための作業だ。普通はこの作業をしないと治療に入れない。だけど僕が鍼灸師になってすぐに師事した先生は全然違った。むしろ問診を積極的に拒否していた。

 

 

先生「症状なんか言わなくていいのよ」

僕が師事した先生は敬虔なクリスチャンということもあって「神から治療の指を授かった。だから症状なんて聞く必要は無いし聞いたところで私のする治療法は変わらない。」というのだ(傲慢ではなくGIFTという感じで)。しかも患者さんが病状を説明しようとしても「言わなくていいのよ。」なんて拒否してしまう。

はたして患者が訴えたい症状は何なのか。先生の治療によってどういう風に症状は改善しているのか、さっぱり分からないまま時は過ぎてゆく。

そして30分後、僕は困り果てる事態に直面する。

 

1時間のパッケージで30分交代というシステム

菜の花治療院にはベッドが2床あり、患者1人に対して1時間の治療を施すのだけど、30分づつ僕と先生で交代するシステムをとっていた。

つまり患者さん2人を同時にベッドに案内して僕と先生がそれぞれの患者を手がける。30分経ったら僕と先生は患者を交代して残り時間を手掛け、合計1時間で終了としていた。

そんなだから僕は先生に問診拒否された患者を30分間手掛けなければならなかった。

 

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僕がすべきことって何だろう

 問診を拒否されている以上ぼくが改めて症状を聞くわけにもいかず、それでいて先生は治療を施したのだから改善していることを患者さんに実感してもらわねばならない。なんたって先生の神の指は、治療前の悪い状態を確認する作業をすっ飛ばしているから。そんなわけで僕の治療時間はストレッチのように体を動かしたり全身をほぐす中で、どんな症状があってどう改善しているのかを想像する作業がほとんどだった。

 

あまりにかけ離れていた僕と先生の技術の差

問診せずに治してゆく神技で多くの人が治ってゆき、奇跡を起こす治療院として遠方まで噂は広まり予約は数か月先までビッシリ。8時ー20時まで患者が途切れることは無かった。 

おかげで僕自身の技術レベルも相当引き上げられたが、それでも先生には敵わない。なにより患者さんが治療院に来る目的は先生の奇跡の指を体感するためなので、その中にあって僕が30分の治療時間をもらうことに恐怖感もあった。

もちろん先生から患者さんまで素晴らしい人だらけの環境に居心地良く楽しい空間ではあるのだけど。

それからは自分の身の振りについて、独立するだけの技術レベルは充分に感じていたのと先生から離れてみないと同じ高みに立てないような気がして菜の花治療院を辞めた。その後は訪問治療を続けて今にいたる。

 


ようこそ菜の花治療院へ 出会いの日々
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 治療院つくるなら理想は菜の花治療院

なんでにこんな話をしているのかと言うと、6月にテナントで治療院を始めるにあたって自分が思い描く理念や理想って何だろうと考えているうちに、結局いちばん感銘を受けた菜の花治療院が思い浮かんだのさ。


 

ほんわか系鍼灸エッセイ「ようこそ菜の花治療院へ」の千穂子先生