スーパーサイヤ人を東洋医学で診る
鍼灸師は「気とは何か」について勉強しており国家試験でも出題されるので誰もがそれなりに知識を持っている。ただ説明するとなればモヤッとした概念のせいか意外と面倒だったりする。しかも流派によって気の働きや解釈に微妙な違いが出たりして話がこじれたりする。そんなゴチャゴチャした気について初歩的な部分を鍼灸師えみすけ先生がとっても分かりやすく解説してくださった。
なぜ鍼灸を受けると元気になるのでしょうか?
それは、鍼灸は人間の身体にある「気」をコントロールする手法だからです。
こう書くと「気?なにそれ?目で見えないし、なんか怪しそう」
「ドラゴンボールでしか聞いたことない」
そう。ドラゴンボールは気の世界をよく表現している。現実世界は気で人を直接攻撃できるほどの威力を出せる人はごく限られているけれど、治療として気を巡らせたり補ったり削ったりすることくらいは鍼灸師なら日常的にやっている。
というわけでドラゴンボールの名シーンに東洋医学の病名を付けてみよう。
肝気鬱滞・肝気鬱結(かんきうったい・かんきうっけつ)
動画の1分経過したところで悟空がこらえている状態を肝気鬱滞もしくは肝気鬱結という。
症状
- 胸や腹が張って痛む。
- 梅核気(ばいかくき)というノドに梅の種があるようなノド詰まりを感じる。もしくはノドを締め付けられる感じがする。
治療に使われるツボ
- 内関(ないかん):心を落ち着ける効果がある。心臓の動悸、胸痛、胃痛、嘔吐、不眠、鬱病に効く。
- 三陰交(さんいんこう):血の流れを整える。生理痛や更年期障害で使われる。
肝火上炎(かんかじょうえん)
動画の2分30秒あたりからくるクライマックス部分。これは肝気鬱滞の症状が進んだり新な刺激が加わることで体に熱がこもった状態。
症状
熱によって水分がなくなり出血することがある。
目の充血、耳鳴り、頭痛、めまい、吐血
夢を見ることが多くなり、不眠になる。
精神は怒り・焦りの状態にある。
治療に使われるツボ
風池(ふうち):気のガス抜きをして気分をスッキリさせる。
熱極生風(ねっきょくしょうふう)
動画では服や髪などがなびく程の風が起きているけれど普通の人間が体の外側にまで風を起こすのは難しい。ただ体内では肝火の熱によって風が起きている。そして熱で生じた風によって肉体を傷つけてしまう。
症状
- 手足の痙攣、首のこわばり
- 目玉が上を向く、体が反り返る、ツッパる。
- 意識混迷する
治療に使われるツボ
太衝、肝兪:どちらも熱の元になる肝臓の気を整えて体内の風をおさめる。
流派によって見立てが違う
他の鍼灸師の先生に聞けば別の証(症状)を見立てる方もいらっしゃるだろう。また今回僕は見た目だけで判断したけれど、実際の治療では脈や舌を診て、悟空さんの気持ちに寄り添いながら治療をするのが良い鍼灸師だと思う。