口の渇き(ドライマウス)が鍼灸治療で楽になるという研究結果
甘みと酸味の絶妙にミックスしたフルーツタルトって、見るだけでよだれが垂れるよね。
この唾液、幸せに生きる為には凄く大事!
唾液が無かったら人生の半分損するよ?と言っても過言ではないほど、生活の質に大きく関わってくる。
たとえば・・・
でんぷんを糖に変えて甘みを出すことで、食べる喜びを与えてくれる。
虫歯を防ぐ、ストレス測定にも使われる。
その他にも、切手を貼るとき、重なった紙をめくるとき指を舐めるなど、唾液は日常生活のあらゆる場面で活躍してくれる。
ところが、唾液が無くなってしまう恐ろしい病気がある。
口腔乾燥症、ドライマウス。
この不快極まる症状に対して大きな成果を上げた歴史上の偉人といえば、三国志で一大勢力を築いた乱世の奸雄。
曹操(そうそう)
飲み水を手に入れられない所を行軍する曹操軍。
兵士は脱水症になるほど苦しんでいた。
「のど乾いた」
「水飲みたい」
そこで、曹操は機転を利かせ、一言で兵士に気力を蘇らせた。
「前方に大きな梅林がある、甘酸っぱい実がたわわに実っておる。それでのどの渇きが癒せるぞ!」
すると梅林を想像した兵士の口には唾液がいっぱいに広がり、そのおかげで水のある所まで進むことができたという。
「梅を望んで渇きを止む」という格言のできた有名な一幕だ。
さて、残念なことに曹操のしたことは一時的なドライマウスには効いても、病気や治療の副作用で長期間にわたる症状には効き目がない。
病気と水分不足では原因が違いすぎるからだ。
そして困ったことに頭頸部がんに対する放射線治療を受けた人の多くが、副作用としてドライマウスになる可能性がある。
きっと病室を梅づくしにしても無駄なのだろう。
誰もが諦めかけたそのとき、一筋の光が見えた。
鍼灸治療でがん患者のドライマウスが軽減|医療ニュース|Medical Tribune
※ 会員登録する必要のある記事で読めないと思うので、ざっと内容を紹介します。
中国と米国で治療を受けている合計339名の頭頸部がん患者を3グループに分け、1年後のドライマウス発症割合を観察した。3グループは下記の通り。
- 放射線治療+週3で鍼治療する。
- 1と同じ治療だが使用するツボはでたらめ(シャム群)。
- 放射線治療のみ。
1年後にドライマウスを発症した確率と人数
- 放射線治療+週3で鍼治療:34.6%(38/112人)
- シャム群:47.8%(54/115人)
- 放射線治療のみ:55.1%(60/112人)
ここでおもしろいのはシャム群と呼ばれるでたらめな針治療を受けたグループ。
米国では正しいツボを打たれた方も鍼治療を受けたグループと同様に効果が見られたが、中国ではシャム群に成果は見られなかった。
中国の患者はつぼを知っているからシャム群は「今打たれたつぼは間違っている!」と思ったのか。
それともツボは東洋人の肉体に最適化されているのか。
とても気になるところである。
とにもかくにも、放置していたら55%が発症してしまうドライマウスが、鍼治療をすると35%近くまで減少するのは凄い成果だ。
ドライマウス(口腔乾燥症)のつぼについて
残念なことに、上記記事のなかでドライマウス治療に使われたつぼの名前は書かれていない。
なので、今回は唾液を出すために広く知られている経絡とつぼを紹介する。
腎の経絡(少陰腎経)
腎経は水に関わる経絡である。
足裏にある湧泉(ゆうせん)は文字通り「泉の湧くつぼ」。これは欠かせない。
そこから内くるぶしを通って内股をなぞってゆき、お腹の正中線近くを通って、胸と首の間にある鎖骨で止まる。
他の効能として元気を出す経絡でもあるので、ED(勃起不全症候群)とかうつ病治療でも使う。
基本的に困ったときの腎経だ。
猪木も「元気があれば何でもできる」と言ってるのだから、腎経さえ覚えておけば生きていける。
三焦(さんしょう)経(少陽三焦経)
細胞と細胞のすきま、筋肉と脂肪の隙間など、肉体のあらゆる隙間に関わる経絡と言われ、水の通り道としての役割を持つと言われている。
ちなみに諸説ありすぎるので、東洋医学で議論したい人からの「俺の知ってる学説では~」みたいな突っ込みは受け付けたくない(笑)
三焦で議論するのは、群盲像を評するのと同じ。
目の見えない人が象を触ってあれこれ議論しても、一致する意見は「硬かった」くらいなものだろう。
唾液腺近くにあるつぼ
つぼというより反応点というべきか。
「耳下腺・顎下腺・舌下腺」など唾液腺の近くや、関連した神経に向けて施術をする。
治療の副作用や原因不明の症状に困ったら鍼灸という選択肢もアリ
病院で受けた治療や薬の副作用に悩まされたとき、鍼灸という選択肢も頭の片隅に入れておくのをお勧めしたい。
なにせ鍼灸の刺激というのは、針を刺す、もぐさを燃やすといった感覚的に分かりやすい施術だし、刺激量もかなり弱くして臨機応変に体調に合わせることができる。
糖尿病を持っていたり体に傷がつくと治らない場合には、接触針という体表に刺激を与える方法や、温灸という温める程度のお灸もあるので、そういうことに耳を傾けてくれる針灸師に頼んでみると良いでしょう。