猛暑でも「冷水を飲んではいけない」なんて東洋医学は言わない
連日の記録的猛暑が続くなか「体を冷やしてはいけない」という教えを頑なに守る方がいらっしゃいます。
「人工的な道具で冷やすことは自然でないから体に悪い。」とか「東洋医学で冷えは体に悪いという教えがある。」などの理由で、クーラーや冷たい飲み物を拒否されるようですが、熱中症になりはしないかと心配になります。
冷蔵庫やクーラーなど人工物にたより快適に過ごすこともまた東洋医学のひとつであると考えてくださると嬉しく思います。
冷たい飲み物を摂ろう
これは環境省が作った熱中症対策マニュアルで、「冷えた水分の補給」を推奨しています。
よく聞く話として「冷たい水は内蔵への負担が大きく、その後運動パフォーマンスが下がる」というのがあります。(※キャプテン翼で石崎クンというイジられキャラのお母さんが試合中に暖かいお茶を持ってくるエピソードありましたね。)
確かに40℃近い内蔵の中を冷水が通れば負担はあるかもしれません。
飲み過ぎればお腹も下しやすくなるでしょう。
胃腸の弱い方は自分の体に合った状態で飲んで欲しいのですが、もしあなたが元気なら「冷水を飲んでも平気な体を持っているんだよ♪」というように自分の体の強さを信じましょう。
入りすぎた気は「邪気」
「暖かいものを体内に入れることは、良い気を取り込むことだ」と思っていらっしゃる方もいます。
もしかすると気のイメージを「暖かいエネルギー」として刷り込まれているからでしょうか。
例えばテレビで気功師を扱った番組では、必ず赤外線カメラ(サーモグラフィ)が出てきますよね。
気を放っている最中、手の周囲だけ赤や黄色になっているのを見た方も多いのではないでしょうか。
そこで「気は暖かい」というイメージを刷り込まれてしまったかもしれません。
だから「温度の高いものには気が入っていて、それを体内に入れることは気を取り込んでいる」「暖かいものを取り入れると体が充実してゆく」という考えに行き着くのでしょう。
しかし、ここで問題になるのが「取り込み過ぎた気」についてです。
「邪気」という言葉がありますが、これはなにも「良い気は黄色で邪気はまがまがしい青紫色をしている」というものではありません。
実は普通の気も邪気も同じもの。
「余分な気」これが邪気です。
そして気の入りすぎて邪気のある状態を「実証(じっしょう)」といい、むしろ体に悪い状態であることを指します。
鍼灸治療で「邪気を取り除く」というのは単に「体に入りすぎた気を抜いている」にすぎません。
ですから、暖かい気を抜くとか冷やすというのもまた東洋医学の考え方なのです。
猛暑では体を冷やし、冷水を飲み、快適に過ごしましょう
本来は柔軟で固まらないのが東洋医学の考え方ですが、東洋医学を誤解して「こうでなくてはいけない!」と信じ込む方がいらっしゃるので注意喚起を目的として書きました。
自然哲学や東洋医学に知識があるからこそ頑なになってしまい、間違った考えにとらわれることもありますが、東洋医学は正解を押し付ける学問ではありません。
体に良いことも悪いことも感覚で楽しむことこそ東洋医学の本質であると考えてくださると嬉しく思います。